真宗佛光寺派 本山佛光寺

2013年10月のともしび

常照我

「ひと休み」 撮影 谷口 良三氏「ひと休み」  撮影 谷口 良三氏

 

 どなたかが、「春の法然・夏の日蓮・秋の親鸞・冬の道元」と、四季に四人の宗祖を当てはめていたのを思い出す。
 抜群の包容力で、近づく人を魅了した法然のあたたかさを春に、日蓮の迷いなき行動力を、熱く開放的な夏に、誰よりも深い自己凝視で、「信」を一新した親鸞を思索の秋に、苛烈な行と戒で、わが国の禅を確立した道元を厳寒の冬に、私見ではそんな比較対照になろうか。
 列島国民を悩ませた酷暑も過ぎ、親鸞聖人の<秋>が、今年も次第に深まってゆく。
 どれだけ、その聖人に近づけているかなどとは到底思えず、反対に、聖人の求道のおこころに、いかにそむいて生きているかを知る秋。けれど念仏の法はそんな私をこそ、救わずにおかぬと喚びかけてくださる。

 

  (機関紙「ともしび」平成25年10月号 「常照我」より)

仏教あれこれ

 「野良ネコ」の巻

庭の樹の下、金魚が泳ぐ池のふち、夜ともなればガサゴソガサゴソ、いたるところで気配が。境内では、野良ネコの姿をよく見かけます。
 しかし、もともとネコがあまり好きではない私。夜遅くに帰宅して出くわしたりすれば、こちらがビクッとしてしまう始末です。
 しかも、こんな噂を聞きました。「野良ネコはエサをくれる家では、オシッコやウンチをしないそうだよ」と。
 真偽は分かりませんが、そういえば境内の砂地になっている場所では、いつも決まってネコが用を足したような跡が。何て自分勝手なヤツ…。ますます私のネコ嫌いに拍車がかかります。
 しかし、よくよく思い返してみれば、駅や街中の公衆トイレでは多少汚してしまっても、それほど気にならない私。最近では少なくはなりましたが、路上でツバを吐く人の姿、ポイ捨てされた煙草の吸殻、壁への落書きなど。街を歩けば、まだまだ見かけることがあります。
 たとえば、これが自分の衣食住に関わる自宅だったとしたらどうでしょうか。汚してしまえばせっせと掃除をし、ましてやツバを吐いたり、煙草をその辺に捨てたり、落書きをしたりなど、するはずもありません。
 自分の生活空間だけは清潔に、快適に保っておきたいという人間の自意識。野良ネコの行動は本能によるものであって、そのような、たちの悪い自意識など持ち合わせてはいないのでしょう。
 野良ネコに、我が身の勝手さを教えられます。だからといって、私のネコ嫌いが多少でも解消されるのかといえば、それはまた別の話のようです。

 

 (機関紙「ともしび」平成25年10月号より)

 

和讃に聞く

 

「浄土和讃」
仏光照曜最第一
光炎王仏となづけたり
三塗の黒闇ひらくなり
大応供を帰命せよ


(『佛光寺聖典』581頁 8首)

 

【意訳】

 阿弥陀仏の光明は最も優れていて、他仏の光に並ぶものがないから光炎王仏というのである。この光明にあえば三塗(煩悩)の黒闇も必ず破られる。まことに供養を受けるにあたいする尊い阿弥陀仏に帰命すべきである。

このご和讃を拝読する時、「佛光寺」とはいい名前だなぁと思わずにはいられません。それは阿弥陀さまのお徳の特長は他のどの仏さまにも勝れた光明のはたらきにあるといただけるからです。

 

  停電パニック

 インドのホテルに一人泊まった時のこと。夜9時に発電機が止まると聞いていたのに、まだ間があると思ってシャワーを浴びたところ、シャンプーの最中に真っ暗になりました。そこからはたいへんです。暗闇で裸ほど心寂しいものはありません。何も見えない中であっちにぶつかりこっちにぶつかりしながらタオルを探し、必死でライトを見つけた時ようやく一息つけました。
 光を得てようやく自分の身の周りがどうなっているか分かって安心したのでした。

 

  光あればこそ

 ご存じの通り私たちの眼は光がなければ何も見ることはできません。暗闇ではぶつかるものは全て邪魔者です。しかし光が届いた時、その邪魔者は実は机だったりスーツケースで、私にとって意味のある物だったと分かるのです。光が届く時、得体の知れないものに意味が与えられるのです。いまこの和讃の光とは、智慧を顕す言葉です。
 人生には得体の知れない苦しみがあります。その私たちを煩悩の黒闇にある姿だと見抜かれた阿弥陀さまは、教えの光で照らして、苦しみ悲しみに深い意味を与え、受け止め乗り越える道を知らせてくださるのです。
 ものは眼が見せているのではなく、光が見せているのです。その仏光第一の阿弥陀さまは、炎のような力強さで私たちを導き、暗闇に射す光のように、私たちに依るべき処を知らせてくださるのです。

 

 (機関紙「ともしび」平成25年10月号より)

 

 

 
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