真宗佛光寺派 本山佛光寺

2023年12月のともしび

常照我

「菩提樹紋様(袈裟裂)」「菩提樹紋様(袈裟裂)」

 お釈迦さまが、菩提樹の下でお悟りを開かれたという謂れから、袈裟や荘厳品に使用されている。12月8日(旧暦)にお釈迦さまがお悟りを開かれたことから「成道会」という仏事が行われる。


 「四年ぶりの」という見出しが続出したこの一年。コロナ禍の過去三年間、花火大会など大イベントから身内だけの行事まで、人の集まるあらゆる催しが中止になっていました。
 この間、お寺でも、各種法要や法話会のオンライン配信が試みられました。その日その場所には行けないけれど…という方には朗報でしたし、それまでご縁のなかった方に知ってもらう機会となる側面もありました。
 そんな利点も感じつつ、場が持つ力を改めて味わう一年ともなりました。ご本尊がいらっしゃる荘厳な空間で、皆でお念仏を唱和する。ついつい知識として聞いてしまっていた教えが、理屈を超えて私に響いてきます。
 いつでもどこでも聞けるのも良し。直接触れる場に出向けることもまた良し。そう感じます。

  (機関紙「ともしび」令和5年12月号 「常照我」より)

 

親鸞聖人のことば

かなしきかなや道俗の
良時吉日えらばしめ
天神地祇をあがめつつ
卜占祭祀つとめとす

『正像末和讃』より(「佛光寺聖典」六四四頁)


【意訳】

 悲しいことに、僧侶も在家の人々もみな、日の善し悪しを選ぶ占いを信じ、天地の神々を崇めながら、占いや祈祷に励んでいるのです。


 毎朝チャンネルを合わす情報番組での占いコーナー。十二星座のその日の運勢をランキング形式で発表してくれます。


「今日のラッキーメニュー」
 普段であれば、自分の牡牛座の順位など気にすることはありません。しかし何か大切なことがある日、その占い結果はいつもと違って響いてきます。
 社会人になって受けた大学院入試当日の朝、テレビから聞こえてきたのは、「ごめんなさい。今日の最下位は牡牛座の人」。「えっ」。思わず声が出ました。「あやまるくらいなら発表してくれるなよ」と、心中おだやかではありません。続けてアナウンサーが「でも大丈夫。そんな牡牛座の人の運勢を回復させるラッキーメニューは、豚の生姜焼きです」。すでに朝食を終えていた私は、嫌な気分のまま試験会場に向かいました。

「悲しいこと」
 試験合格、商売繁盛、家内安全。私たちはその時々で様々なことを願います。
 当然、入試には定員があります。私の試験合格の裏では誰かが試験に落ちる。私の合格を願うことは、誰かの不合格を願うことと同義なのかもしれません。繁盛する店があれば、商売が上手くいかず閉める店もあります。家内安全とはあくまで自分の家の安心安全。隣の家の安全はどうしても願えません。
 私中心の願いに固執し、占いや祈祷に振り回され、自分の思い通りにしたいともがく。その結果私たちは対立し、いがみあうことにもなりかねない。それはとても悲しいことなのです。
 さらには、入試に不合格となれば。自分の実力不足を受け入れず、食べなかった豚の生姜焼きのせいにしてしまいかねない私もまた、悲しいのでしょう。

  (機関紙「ともしび」令和5年12月号より)

 

仏教あれこれ

「都はるみさん」の巻

 私は、歌手の都はるみさんが大好きです。
 きっかけは二十代後半、知り合いの住職からコンサートに誘われたことです。
 当時の私は、うれしく思えずお断りしようと思いました。ところが「S席だぞ」「夕食おごるぞ」という言葉に釣られ、ご一緒することにしたのです。
 会場に入るとさすがS席、ステージから五列目の左側。
 やがて開演。会場は暗闇から一気に照明がステージを彩ります。そしてオープニングの曲に、客席からは拍手喝采。その後も、次々と歌い舞う彼女に次第に魅了されていきました。
 休憩後の一曲目は、レコード大賞受賞曲「北の宿から」。彼女はイントロから、振り袖をなびかせながら舞台左へ。そして私の前でひざを折り「あなた、かわりはないですか」と、なんと私を見て歌われたのです。そして立ち上がり、またひざを折り「北~の宿」と、再び私を見つめ歌われたのです。その時、初めて彼女と目が合いました。
 私はこの瞬間から、都はるみさんのファンになったのです。
 終了後「よかっただろう」、食事中「楽しかっただろう」と話しかける住職の声も聞かず、購入したCDを手に「また行きたい」と思っていました。
 私は、布教使として法話をします。ある法要の時、いま私の左前で寝ている方も、都はるみさんのような魅力をもって話せば目を開いてくださるに違いないと思ったのです。思い切って演台を離れ、その方の前で熱弁を振るってみたのですが目は開かれませんでした。
 それでもいつかは、都はるみさんのような魅力が私にもと、今日も彼女の曲を聞くのです。

  (機関紙「ともしび」令和5年12月号より)

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